50 おじいおばあの作った歴史。


台風小さく、空は曇り。
西表島。
太陽が「入る(イル)」から「西」と書いて「イリ」と読む。

「イリ」が「表(オモテ)」とはどういう意味だろう。
西表には東部と西部がある。
そして、新しい部落と古い部落がある。

古い部落は西部に多い。
だから昔は西部が島の玄関がわり。
それで「イリ(西)がオモテ(表)だ」という話がある。

本当かな。
本当っぽいな。

でも、東部に住む、東部を愛する人間としては、
東部にも「古見」という立派な古ーい部落があるので、
どうもイマイチ認めたくないな。

「古見」の伝統は素晴らしい。
「豊年祭」や「結願祭」、唄、踊り、狂言。
豊年祭のときにしか唄ってはいけない唄がある。
しかも、しきたりで、他所もののわたしには決して聞けない、
山の中だけで、古見の人だけでうたう唄がある。
楽譜や記録として残らず、口承だけで伝えられた唄がある。

この島に来てずっと、この伝統ばかりを尊敬してきた。

新しい部落を薄っぺらに感じたときもあった。

だけど、今は違う。

「豊原」は今年で入植50周年。
「大富」は今年で51年。「大原」は50…何年かな。

周りにいる、おじいおばあは、ほとんどみんな70代。

この新しい部落たちは、
今70代のおじい達が、20代だったそのときに、
未開のジャングルだったこの島をまさに「切り拓いて」作ったのだ。

もちろん電気も水道もない。
暑さの中で、食べ物を保存するのもままならない。
子供をおぶって畑仕事、川で洗濯。
切っても切っても生い茂るジャングル。
どれだけの苦労がそこにあったろう。

すごい。

おじい達と話してると、ときどき「敬意」で胸がいっぱいになる。
「目の前で笑ってるこの人が、この島の歴史そのものだ」

教科書じゃない、生きた歴史がここにある。
自分まで、この島の歴史の1ページに参加できた気がして、
背筋が伸びる。

この島の歴史そのものと、時を共にできる幸せ。

古い部落ももちろん素晴らしい。
でも、新しい部落の、この50年。

全てのおじい、おばあの笑顔に、全く頭が上がらない。

50

4月23日


カテゴリー: 2003年4月, 西表日記2003   パーマリンク

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